「スウェーデンでゲーム作ってるんだ」と自己紹介すると、大体「えー、すごいね(何がすごいのかわからないけど、なんだか日本からだいぶ離れた寒い土地で、え、ゲーム?何それ儲かるの?)」みたいな反応に慣れてしまった私です。インドにいた時の「え?毎日カレー食べるの?」という質問よりはまだマシだとは思ってますが。
コ、コホン(咳払い)
(それでは私がスウェーデンのゲーム会社で働いていることを肯定するために)今回スウェーデンの ゲームデベロッパーインデックス2019が発表されていたので要約+私視点での解釈を書いてみました!英語が読める方は是非上記リンクからどうぞ!面白いです。
<要点を意訳してみた!>
- 2018年の収益は18.7億ユーロ(約2195億円)に増加。これは、2017年と比較して33%の増加であり、5年間でほぼ3倍の増加。この増加は、世界平均の12%より高くなっている。
- ゲーム業界における求人は48%増加し、2,586人を超えるフルタイムの新入社員がスウェーデンのゲーム企業に登録されている7,924人の従業員数に加わった。このうち5,320人はスウェーデンを拠点としており、2017年と比較して650人増加している。
- スウェーデンのゲーム業界における従業員の5分の1は女性。正確には、1,036人の女性がスウェーデンに拠点を置いており、合計1,699人の女性がスウェーデンのゲーム企業に雇用されており、その全体に占めるシェアは21%となる。
- ほとんどの企業は収益性が高く、セクターは10年連続で合計利益を報告している。
- 2018年には、スウェーデン市場で4億ユーロ(約470億円)を超える投資と買収が38件報告された。 これらの取引のうち28件は、スウェーデンの企業が買い手である。
- 2019年1月から9月にかけて、スウェーデン市場で29の投資および買収が報告され、総額2億4,000万ユーロ(約280億円)に上る。
- 上位25社は、企業利益に1億1,400万ユーロ(約134億円)の税金を拠出。
- 年次報告書で社会保障料を宣言した15大企業は、1億ユーロ(約117億円)強の追加税を寄付した。
注1)全てのユーロ→日本円は本日2020年5月23日時点の為替に基づいて換算。
注2)スウェーデンの人口は約1,022万人と日本の10分の1以下の人口。(日本の人口は約1億2621万人)
それではグラフがあるので、グラフと少し深掘りをば。
収益
収益は10年以上連続して利益を上げていて成長していると。2018年まではマインクラフトを制作するMojang(モヤン:スウェ語読み)とキャンディクラッシュを制作するKing(キング)によって牽引されたいたのが、昨年、Embracer Group(エンブレエーサー・グループ)がKoch Media(コック・メディア)を買収し、スウェーデン最大のゲームスタジオに。この買収の結果、世界中に1300人の雇用を抱える企業となり、スウェーデンだけでなく世界にも影響を与える存在になったとのこと。今後の成長に期待大のEmbracer Groupです。
雇用
スウェーデン国内では優秀なゲーム開発人材を確保することが困難である為、スウェーデン国外でスタジオを展開する会社が増えたとの記述があります。私も直面した通り、EU国外の人材を雇おうと思うと、かなりビザの手続き、法的実務な困難な壁があるので当然の流れかと。特にどこの国かは書かれていませんが、私の知る範囲でもスウェーデンとマルタ島に会社を作り、マルタ島で雇用するケースをここ1年で3社見ています。
女性の雇用
北欧は男女平等が謳われている国ですが、これまではやはりゲーム業界は男性が多くの割合を占めていたそうです。がここ近年でゲーム業界での女性の雇用もかなり増加してきてると。もちろん企業努力もまだまだ必要なところではあると書かれています。面白い記述としては、「モバイルのゲームを扱う会社には女性の雇用者が多い傾向がある。」というところですね。
収益
スウェーデンのゲームスタジオの中で収益が高い順です!さてみなさんがご存知の会社はあるでしょうか?
1位は昨年の買収でスウェーデン最大となったEmbracer Groupは31のゲームスタジオを世界にもつグループです。
2位はおなじみマインクラフトのMojang。マイクロソフトに買収されましたが、開発はスウェーデンのストックホルムで行われています。
3位もおなじみ、キャンディクラッシュを制作するKing。こちらも米国のActivision Blizzardに買収されましたが、スタジオはスウェーデンにあります。
4位のG5 Entertainmentは、マッチ3パズルや麻雀などのカジュアルモバイルゲーム、ウェブゲームを出版している会社です。意外かと思いますが、一つのカテゴリに対して結構な数のゲームを有しているので、クロスプロモーションでプレイヤーの囲い込みがかなりしやすいことと、G5とうブランドでファンがいるので結構手堅い感じです。
5位にきましたEA DICE!ここは『Battle Field(バトルフィールド)』シリーズで人気のスタジオで世界中にファンをもつスタジオです。
6位のStillfrontはモバイルのF2Pゲームを出している会社ですね。戦略ゲームからアクション、ビンゴゲームまで幅広いタイトルを持っています。
7位のParadox Interactiveはがっつりやり込める系のPCゲーム制作スタジオです。有名なところでは、Cities:SkylinesやCrusader Kingsなどがあり、ハードコアなファンがいるスタジオです。
8位のAvalanche Studiosは先日記事にしましたが、こちらはハンター系のゲームやネイチャー系のエンバイロメントアートが結構世界に浸れるゲームが多めです。
hokuogamecat.hatenablog.com
9位のUbisoft MassiveはおなじみフランスのゲームスタジオUbisoft系列です。現在、アサシンクリード:ヴァルハラを絶賛開発中。
10位のStarbreezeは『PAYDAY(ペイディ)』というシリーズを手掛けており、すでに3作品目へ。私があまりプレイしないタイプのゲームなのでこれまでノーマークだったのですが、結構大きなスタジオだったんですね。意外。(すみません)
雇用者数!
雇用者数も出ていますが、まあ収益と雇用者数は大体比例している感じですね。ちなみに10位にランクインをしているGoodBye KansasはゲームスタジオにキャラクターのモーションキャプチャーやVFXを提供している会社です。
ロケーション
スウェーデン全国でどこにスタジオが多いか?ということですが、160スタジオが首都のストックホルムに拠点を置いているということですが、私の住むSOUTH(南)ももうすぐで1000人の雇用者数に届く見通しです。(南はUbisoft Massiveがあるので半分以上はそこに勤めている人が大半ですが。)南は日本でいうと博多みたいなポジションなのですが、首都よりのんびりしてるし、首都より物価や家賃が高くないし、家探しやすいし、空港近いし。みたいな感じで人気のエリアになりつつあります。特にゲーム開発は首都でないと出来ないというわけでは全くないので。
他の北欧諸国と比べると?
ゲームスタジオの数、雇用者の数はスウェーデンがダントツに多い結果になっています。フィンランドは通貨にユーロを使用しているので、ユーロ換算で良いのですが、近年スウェーデンクローナが下がっているので、ユーロ換算し直すとちょっと少なめな数字になってます。レポートの中にはフィンランドの収益のほとんどがSupercellに依存しているが、スウェーデンは上位企業が程よく稼いでいるのでバランスは悪くないとも書かれています。
ゲーム業界はインターネットあってこその業界なので、”もし明日、全てのAppStore、Google Play Storeがハッキングされてクレジットカード情報がリークされたので全てのモバイルゲームの課金を中止する。”なんてことになったら、モバイルゲーム会社の収益がだだ下がりするのは目に見えて明らかで、なので一つのプラットフォームや、一つの課金システムだけに収益を頼りすぎるとちょっと危ないというのはどこの業界も同じ感じなんですよね。
ということで、スウェーデンの ゲーム業界・開発者インデックス2019 から私が面白いと思ったデータをご紹介しました。もっと知りたい方はぜひ上記リンクから読んでみてください。
ゲーム業界は生き物なので「完全に安定している業界か?」と聞かれたら私は「決して安定しているとは言い切れない」業界だと思います。とはいえ、実力があれば、これだけの数のスタジオがあれば転職はそう難しくないというのが実際です。もしゲーム業界が難しかったとしても、ゲームUI/UXデザイナーはユーザーインタラクティブ性を見据えたデザイン力に定評があり、他のIT企業でのWebやアプリサービスのUI/UXデザインにおいてもかなり優遇されます。マーケティングもデータ解析やUA(ユーザー獲得)などのエリアでアプリを提供するサービスの会社なんかで活躍することもできます。
ということで、スウェーデンのゲーム業界の未来は明るいぞ!
そうだ!ゲームを作ろう!
(こんなオチでいいのか?)