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北欧でゲームのお仕事

ゲーム開発とメンタルヘルスについての話をしよう

ある男性が精神科医を訪ねて、先生にこう言った。「私の人生は悲惨だ。もう何も人生に希望が持てない、社会だって酷いものだ。先の見えない不安定な社会をたった一人で生き抜く辛さがわかりますか?」

 

医者はこう答えた。「簡単なことですよ。今夜あの有名なピエロのパリアッチのショーがあるから、行ってきてみなさい。笑えばきっと気分も良くなりますよ」

 

突然、男は泣き崩れた。

 

そして言った。

 

 

「でも先生、私がパリアッチなんです」

 

 

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これは私が読んだアメコミの中で一番ハッピーエンドでない『ウォッチマン』の中のセリフ。私がパートナーから「『アベンジャー』の映画をみに行こう」と誘われた時に、ちょっとイライラしていた私は「アメコミなんてどうせ最後はヒーローが勝つんでしょ?」と言ったのがどうやら悲しかったらしく、黙って家を出て行ったと思ったら10分後にこの本を持って家に帰ってきたというストーリー。

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贈られた

もう全編を通して色々苦しすぎる展開と最後にヒーローもそれぞれ苦悩があるんだなぁと思いつつ、アメコミをひとまとめにしてしまったのを猛反省。恐らく私もパートナーに「マンガなんてどれも一緒」とか言われたら超激怒するので。

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フルカラー

 


ということで、プレイする人を楽しませたり感動させたりするゲームを作るのがゲーム業界従事者なわけですが、作り手だって人間。プレイする側だって人間。と言うことで海外では結構ゲーム開発者、プレイやーのメンタルヘルスの問題について話すことが多いにあります。

 

うちのスタジオでは開発者の精神を健全に保つために

  • 17時以降は仕事しない
  • なんかちょっとしんどいなって時は無理せず休む
  • 就業時間外に仕事した場合は次の日か近日中に仕事を早く切り上げる
  • 休暇中は仕事をしてはいけない
  • 締め切り前の徹夜はしちゃダメ
  • 金曜日はクリエイティブフライデーで何をしてもいい
  • 精神的に辛い時は声に出していう
  • 数ヶ月毎に一人一人の仕事についてストレスがないかヒアリングがある
  • わからないこと、できないことははっきり言う
  • 燃え尽き症候群バーンアウト)しないようなタスク管理をする
  • 給料はみんな一律

と言う決まりがあります。が、私はスタジオ内で年長者なのであまり「しんどい」って言いにくい立場だったのですが、チームの一人に「今日元気ないね?大丈夫」と気を使われてしまったので、「しんどい」時は素直に言った方が周りも心配しなくていいので逆に言った方がいいんだなと。それ以降は気軽に「しんどいから今日3時で仕事終わるね」とか言えるようになりました。

 

 

 

と言うことで、今回はゲーム開発、ゲームに関するメンタルヘルスの読み物をご紹介。

 

 

 

State of the Industry 2019

ゲーム業界におけるメンタルヘルスについて。こちらTake Thisにより無料で公開されているPDFです。主にゲーム業界に置ける仕事のストレス、不安定さなどの書き出しから、ゲーム開発者のキャリアパス的に、数年間かけてゲームを開発することがザラなこの業界では成果物に長い時間かける必要があること、開発者の3分の1の人しか10年以上業界に従事できていない統計。ゲーム開発者の53%が長時間にわたって週40時間以上働くことがあることの不健康さ。あとは、大きなスタジオで働いていると個人の達成度の低さやクリエイティブへの絶望感など様々な不安要素が書き出されています。

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https://www.takethis.org/wp-content/uploads/2019/07/TakeThis_StateOfTheIndustry_2019.pdf


Take Thisはゲーム業界のメンタルヘルスに特化した非営利団体です。

www.takethis.org

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大丈夫じゃなくても大丈夫!




Crunch Hurts


長時間労働や厳しい締め切りの設定は睡眠不足、ストレスを増やし、従業員のメンタルヘルスを害すると、そんな中で制作されたゲームもバグが増え全体的に生産性は下がる。また締め切りを乗り越えた後にやってくるバーンアウト燃え尽き症候群)なども起こり何もいいことがないというリサーチです。

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http://www.takethis.org/wp-content/uploads/2016/08/CrunchHurts-TakeThis.pdf

 


Video Game Addiction

なにがどうなったらゲーム中毒なの?私ってもしかしてゲーム中毒?そもそもゲーム中毒ってどう言う定義なの?って疑問が湧いた時に読むのがおすすめ。「ゲームをしてないとイライラする」とかいろんな症状についても詳しく書かれています。

www.takethis.org

 

 

The Social and Emotional Benefits of Playing Online Games

オンラインゲーム内でのコミュニケーションは実際に実社会における社会的スキルや感情スキルの発達を促進することができるのか?と言うリサーチ。私もオンラインゲーム内でできた友達と実際に友情を育んできた事例があるのでこれは面白いリサーチでした。

www.takethis.org

Gemers supporting Gamers

「ゲーマー」と言う言葉が持つステレオタイプに悩まされる人も多い。やはりゲーマーというと「男性」と言うイメージが強く、それ以外の属性だとわかるとゲーム内でいじめられたり嫌がらせを受けたりした経験がある人を対象に行われたリサーチ。人種や民族、宗教、能力、性別なんかを理由にゲーム内で毒を吐かれた経験なんかは精神的にトラウマになってしまいそうです。私も無意識に男性キャラを選んでしまうのはそのためなのかな?とか考えさせられます。

www.takethis.org

Video Games and Well being

心理学、教育学、メディア研究、コミュニケーションサイエンスの研究を統合してビデオゲームの仕組みとナラティブが心理的幸福感の増加に関連するリサーチ読み物です。

www.amazon.ca

 

The Vido Game-Debate

暴力行為があるゲームをすると暴力的になるのか?教育ゲームは本当に教育に良いのか?などの心理学的なアプローチのリサーチ本です。

www.amazon.ca
Getting Gamers

ゲームは単なる時間の浪費なのか?ゲームが与える私たちの脳への悪い影響、良い影響が書かれた一冊。もしかしたらゲームをすることで人間関係が向上したり、仕事がはかどったりすることもあるのでは?

www.amazon.ca

Moral Combat

アメリカ全土では何百万人もの子供がCall of DutyやHaloなど仮想の銃を手にして暴力的な仮想世界を歩いています。これは現実社会にどう反映されるのか?アメリカ政府がメディアが与える危険性についてのネタと実際のところどうなのか?と言うのが書かれた書籍です。

www.amazon.ca

 

と言う感じです。

 

 

こういう書籍を読んでいると、東京時代、夜中の3時まで私を働かせていた上司をこの書籍の束で殴りたい気持ちで胸がいっぱいになりますね。

 

 

上記読み物は全て英語ですが、もし興味があれば半分は無料なのでどうぞ見てみてください。日本語でのこれ関係のオススメの書籍があれば是非コメント欄で教えてください。


 

それではみなさん健康第一で!