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北欧でゲームのお仕事

スウェーデンの就労ビザは簡単にとれるのか?スウェーデンのゲームスタジオで就労ビザを取るまでに8ヶ月かかった話。

北欧の自然な暮らし、政治の透明度、男女平等、ワークライフバランス、フィーカ、ヒュッゲ・・・日本ではかなり賛美されているようですが、実際のところ、どうなの?と思ってる人も多いかと思いますが・・・、ぶっちゃけかなり良いです。でもこちらはこちらで問題がないわけではないのですが・・・

 
簡単にここまでの流れなのですが、

2011年には学生ビザでフィンランドへ勉強しに
2015年にビジネスビザでインドへ移住
2016年に配偶者ビザ(非EU国民者)でデンマークへ移住
2018年に配偶者ビザ(非EU国民者)でスウェーデンに移住
2020年にスウェーデン就労ビザを取得しました!

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デンマークコペンハーゲン


北欧へは北欧諸国やEU国籍者との配偶者関係で来る人が私の周りでは多く、その場合配偶者ビザで働けるので、自分で就労ビザを取る必要がありません。数年経てば永住権までもらえる*というなんともありがたいビザなのですが、非EU国籍者はそうも言ってられないのです。*2020年現在@スウェーデン

 

私の場合は、配偶者も私も非EU国籍者であり仕事がなくなるとその国に住めないという状況。永住権取得に至っては連続してその国で一定収入以上の仕事に就業/居住している必要があり、現在スウェーデンで4年、デンマークで9年の年月を待たなければなりません。ゲーム業界という結構不安定な業界で4年間仕事をし続けるのは結構並大抵のことではありません。

 

2016年にデンマークに来た時に自分で会社を立ち上げ、ゲームパブリッシャーへのマーケティングコンサルを開始。スウェーデンに移住した際にも自分で会社を作り引き続きマーケティングコンサルを行い、アシスタントも揃えてようやく自分以上のキャパシティの仕事の受注ができるようになって来た頃、配偶者が仕事をやめることに。仕事を辞めてから次の職に就くまでに3ヶ月の職探し期間が設けられているのですが、パートナーが3ヶ月で職が見つかるか保証もないので、私もスウェーデン企業に就職し就労ビザを取ることに。これでどちらかが職を無くしたとしても住み続けられるようにリスク分散を行うのが目的でした。



ということで移民弁護士に相談して、私の就労ビザを取得する旅が始まりました。

 

2019年6月:移民弁護士を雇う 16,000円/時間

2019年6月:移民弁護士に書類を全部揃えて提出してもらう 7時間作業

2019年10月:移民局から「配偶者ビザがあるのに、なんで就労ビザに切り替える必要があるのか?」と電話が掛かってくる。

2019年10月:移民局から「会社の試用期間6ヶ月って書いてあるけど、これ6ヶ月後に絶対雇うって契約書に書かれてないよね?だったら6ヶ月の就労ビザしかあげられない」ちなみに私の雇用契約者は移民弁護士が制作。

2019年11月:弁護士と雇用主が『試用期間後、双方問題なければ雇用を継続する』というレターを作成、私もサインして提出する。

2019年11月:移民局からそれでは不十分だと指摘。雇用主に頼んで元々の契約書の「正社員」という項目にチェックを入れてもらい、それを再度提出する。

2019年11月:移民局からこれまでの給与明細と会社が加入している保険の詳細の提出を求められる。提出。

2019年12月:移民局から「あなたの就労ビザに関して意思決定をするので、スウェーデンから一旦出て行ってください」と連絡。移民弁護士に相談し「①私の配偶者ビザがまだ有効であること。②配偶者ビザがなかったとしても日本のパスポートで3ヶ月間まではシェンゲンエリアに滞在できるので、スウェーデンで意思決定を待っても違法ではないこと、③ビザを理由に家族を引き離せないこと」などの理由を移民局に掛け合ってもらいましたが、結果は却下。

2019年12月スウェーデンから出ると言われてもどこへ?と弁護士と移民局に問い合わせたところ、弁護士からは「法的住所がある場所(=日本)」と。移民局からは「スウェーデン以外だったらどこでも!」と、もう誰が正しいことを言ってるのかわからなくなってくる自体に。

2019年12月:移民局のこの発言を元に弁護士が掛け合い「もうデンマークでいいよ」ということに。ちなみにデンマークは私の住むスウェーデンの都市マルメから電車で20分。「もう、そんなんでいいんかい!」と突っ込んでしまう自体に。とはいえ電車で20分、国境という国境もないパスポートコントロールもない。どうやって私がコペンハーゲンに居ることを証明すれば?

 

2019年12月:私がどうやってスウェーデン国外に居ることを証明するかを巡ってさらに弁護士が掛け合い「明日コペンハーゲンデンマークの首都)へ行って、明日の日付の新聞を買って。そしてその新聞を体の前で持って、何かコペンハーゲンの有名な場所を背景に写真を撮って移民局に送るの」と。

 

 

もうなんかカフカ的な感じになってきたなと。

 

 

もうそんな写真フォトショップでどうにでもなるやんと。

 

 

なんやこれ、なんかのアリバイ工作なんか?と。

 

 

2019年12月:自宅から約20分のコペンハーゲンへ行き、中央駅で新聞を買い、チボリの前でセルフィーを撮り、それを送信し、またスウェーデンへ帰ってきました。その一週間後、クリスマス直前、移民局から電話があり「今まだスウェーデン国外ですか?」と。嘘がつけない私は素直にスウェーデンに戻ってきたことを話すと、「もう一回スウェーデンから出て行って」と言われる羽目に。「でもクリスマスと正月休みに入るのでまた年明けたら、出て行って」とそっと会話に付け加えて。

 

 

2020年1月:再度コペンハーゲンに行き、新聞セルフィーを再度送り、電話とメールで移民局に連絡。今回は1週間は滞在予定で食料を買い込み友人宅に缶詰になり仕事をしていたところ、滞在2日目に「就労ビザがおりたわ!」と弁護士から連絡があり、スウェーデンの家に帰宅。

 

 

ということで「8ヶ月+弁護士代+追加書類+スウェーデン国外へ2度出る」という等価交換で2年間の就労ビザを取得しました。



何を言いたいかというと、すでにスウェーデンに居住して+すでに仕事が始まっている(就労ビザを申請した時点で降りてなくても就業開始できる=税金を納めてる)のにこの官僚的な移民局の対応。びっくりですよ。そして移民局と移民弁護士の言ってることに差異があるのも大きな謎として残りました。



結局交渉などで50万円近くを弁護士に支払うことになったのですが、価値があったかどうか?と言われると弁護士を使わなかった過去は見ることができないので、自分の中では価値があったという風にしておきたいと思います。



確かに、スウェーデンは移民の受け入れに積極的でスウェーデンの人口の26%が外国人(4人にひとりは外国籍)という統計があるらしいのですが、それは福祉国家としての進む道だと思うのですよ。

norr.jp

税金を払ってくれる「人々」を増やす。ただその増やす「人々」というのは誰でもいいわけじゃなく。ある程度移民受け入れ制度にもう少し柔軟な対応、というか移民のバックグラウンドやスキル、職種によってそれぞれの異なるビザ取得プロセスのシステムが必要なのでは?と思うこの頃なのです。そのシステムを構築せずに全部一緒に処理しようとするから柔軟性がなくなりどうしても官僚的になってしまう。結構オンラインやシステムの最適化が進んでいるスウェーデンでこんな感じだったので、ちょっと意見を書いておこうと思いました。


もしこれからスウェーデンで就職、移住しようと思っている人の役に少しでも立てれば幸いです。

 

<追記1>
なんでこんな大変なプロセスを経てまで他の国に住む必要があるの?と思う人も多いと思いますが、私の今のライフステージにあってると思うので今はスウェーデンにいます。もしかしたら次のライフステージではまた別の国に住んでるかもしれませんが。

 

<追記2>

スウェーデンでは大きな会社なんかの海外からの採用を行なっている会社は移民局に登録されており、比較的早く申請が通ります。ファストトラック(早くビザを取得できるエージェンシー)なども存在しそれを使うことで数週間でビザが取れるケースもあります。またスペシャルスキル人材、即ち職人や北欧諸国が人材不足で必要としている人材に当てはまる人材には別のビザが降りるケースもあるようです。