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北欧でゲームのお仕事

北欧のインディゲームを取り巻く環境が最高なので移住しました!

今、絶好調にインディゲーム業界が盛り上がっているエリアといえば、そう北欧 (多分)!

 

日本のモバイル向けゲーム会社がガラケーのゲームから抜け出せなかった頃、いや、ガラケーからスマホへの移植の仕方が全くスマホである意味を為していなかった頃、既にフィンランドでは怒った鳥が世界に向けて飛んでいました。

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そんなわけで(どんなわけで)、スマホ向けゲームや最近のNintendoSwitch向けの北欧インディゲームが、なぜ世界で盛り上がっているかを自分なりに考えて綴っていこうと思います。※結構な長文です。


まず「北欧」という定義なんですが、今回のブログではフィンランドスウェーデンデンマークノルウェーを「北欧」と狭義することにします。




ブランド知名度

日本での北欧の認知度というと、フィンランドムーミンNOKIAスウェーデンIKEAH&MデンマークLEGOロイヤルコペンハーゲンなんかがあります。ノルウェーはサーモンが有名ですね!脂がのってて美味しいです🐟
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ゲーム出身地

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『AngryBird』のRovio、『Clash of Clans』のSupercellフィンランドスマホゲーム黎明期にNOKIAをも救済する存在となった2大ゲームスタジオです。スウェーデンは、子どもからハードコアゲーマーまで夢中になれる『Minecraft』のMojang AB、加えて女性に絶大な人気を誇る『ChandyCrush』のKingもこの国出身です。デンマークは世界初スマホゲームで18億DLを記録した『SubwaySurfers』のSYBO、5億DLは行ってないかもしれないけど、スマホゲームの可能性を広げた『LIMBO』を生んだPlaydeadもデンマーク出身であります。またポケモンGOにも使用されたゲームエンジン開発ソフトのUnityはデンマークのスタートアップ。現在HQはUSにあれど、Unity Technologiesはコペンハーゲンにあり、CTOはコペンハーゲンに住んでいます。

上記のゲームスタジオの中には買収されたり初期からの株主構成が変わってしまっているスタジオもあり、加えもうすでにインディのサイズではなくなってしまっているのですが、現北欧のインディゲームに強く影響を与えたであろう北欧出身ゲームであります。

 

 

ゲームスタジオの数

2016年9月にフィンランドのSisuGame VenturesとNeogamesが出したこのレポートによると北欧のゲームスタジオ数はこんな感じでした。

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スウェーデン🇸🇪

2018年今現在ではスウェーデンには304つのゲームスタジオが存在しています。スタジオの中でも私が一番衝撃を受けたゲームはSimogoの『The sailors dream』のグラフィックでしたね。

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Swedish Game Developer Index 2017-2018

 


デンマーク🇩🇰

デンマークは2018年の最新のデータがないのですが、過去データと現状のゲーム業界の盛り上がりと自分の経験を加味して190社-200社くらいは存在すると推測します。うちのゲームスタジオもデンマークコペンハーゲンに登記されています。私にとっての衝撃のゲームはPlaydead『LINBO』でした。

Game Hub Denmark

 

 

フィンランド🇫🇮


フィンランドは結構小さな都市にもゲームハブがあり、フィンランド全土で盛り上がってる感じはあります。国を挙げてゲームスタジオやスタートアップを応援しているイメージが強い国で、280-300くらいはゲームスタジオが存在していると推測できます。私が最初に衝撃を受けたフィンランドのゲームはFrogmind Gamesの『Badland』のグラフィックですね。

Front page | Neogames

Hubs — IGDA Finland

 

 


ノルウェー🇳🇴

意外なことにノルウェーは知り合いのゲームスタジオが2つしかなく、あまり実態がつかめてない国の一つなんですが、2016年の時点で60スタジオだったので、今はもう少し増えているかもしれません。最近NintendoSwitchにてリリースされた、制作年数9年のD-pad Studioの『Owlboy』ノルウェーのスタジオの作品。ファミコンで育った私世代には泣けるグラフィックスと美しい音楽が至極のゲームになってます。超オススメです!ノルウェーのゲームスタジオも今後注目してみていきます!

 

 

 

 ノルディックゲーム

 
毎年5月頃に開催される、ゲームの祭典「ノルディックゲーム」は結構盛り上がります。

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4月にはノルディックゲームジャムなんかもあり、開発者の交流は結構活発に行われています。北欧の全部の国を合わせても2,630万人しかいない中で(ちなみに東京都の2倍の人口レベル)これだけの人たちがゲームを作る仕事に関わってるってすごいことだなぁとしみじみ思います。今年のNordicGameは5月の23-25日です。ちなみに昨年は日本のモバイルゲーム会社gumiがスポンサーになってました。

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ノルディックゲームのスポンサー陣!



 

というのが、北欧ゲームスタジオの現状です。ゲームの売上げや投資の状況なんかも紹介したリンクの中に出ているので気になる方は要チェックです!

 

 

 

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ちょっと休憩




これ以降は、北欧ゲームの特徴やゲームを作る風土ってどうなのか?自分の実体験を元に考えた事を書いていきたいと思います!

 

 

私が最初に北欧に降り立ったのは2011年フィンランドヘルシンキ。留学していた頃でした。その時には既にRovioは社員が30人から60人くらいに増えてた時期で、Supercellもまだ10人規模とかで全然小さかった頃です。当時、私は下記の理由で、フィンランドのモバイルゲームが世界を席捲していると思ってました。

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フィンランドのゲーム開発者にヒットの理由を聞くと「まぁ僕たち冬長いし、その間なにもすることないからね、ゲームするかゲームを作る以外」って倒置法を使って自虐的かつ自嘲的に言うのが鉄板の答えなんですが

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ヘルシンキの冬は-25度でも通常運転


私の中では、フィンランドはそもそも人口520万人の国で国内に市場が無く、初期から英語や多言語でゲームを出すのは当然で、とはいえ英語がネイティブなわけでも無い。なので非言語(ノンバーバル・コミュニケーション)を使い、テキスト以外で子どもから大人までゲームを楽しめるようにゲームプレイを最適化して行った結果、テキストが最小限になった。もしくはプレイアブルなチュートリアルでほとんどテキストなくゲームのプレイが理解できるようにデザインを最適化したと言う点においては、やはり北欧のモバイルゲームは長けていると思います。(とは言えファミコン初期やアーケードゲームのタイトルとかなんかも全然テキストなかったですけどね)

またフィンランドはRovioとSuperCellが牽引してるだけあって、F2Pスタイルがインディゲームにも少し受け継がれている気もします。「誰でも無料で楽しめるよ、でもゴリゴリ進みたかったら課金してね、でも別に課金しなくても楽しめるよ」みたいな優しさはフィンランド風です。

 

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WiFi環境がとても良いヘルシンキ


推測と違ったところは、Rovioはスマホの波に柔軟に乗ったタイミングが良かったのと、SuperCellは超データドリブンな運営が功を奏しているので、あんまり冬とかノルディックデザインは直接的には関係なかったかなと。最近のニュースでも「フィンランドのモバイルゲームはスマホの波には乗ったけど、次の波に乗れなくてひどい方向に向かっているんじゃないか?」って警鐘を唱える人もいて、「Nokiaがダメならゲームを作ればいんじゃない?」みたいな、マリーアントワネット状態にならないようにと警告してる記事が下記です。

 


あと、フィンランドは教育水準が高いことで知られているのですが、ゲーム制作は個人の能力によるところが大きいのとUnityやGamemakerなんかのTechの進化で、国単位で教育水準が高い = 良いゲームが生まれてくる。と言うのは必ずしも比例しないと今ははっきり言えます。




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教育水準は関係ない



 さてさて今は、デンマークコペンハーゲンスウェーデンのマルメのインディゲームコミュニティに属しているのですが、ちょっとフィンランドとは違う感じがあります。2016年からまるっと2年関わってみて思うのが、これ。

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コペンハーゲンのインディは、Playdeadの成功を側で見てきてて「Paidゲームでもやっていけるんだ!こだわって作ればきっとそれを評価して遊んでくれるプレイヤー層は一定数いるんだ」という強い意志 + アートや音楽にきちんと時間やお金をかける体制が多くの開発者の中に見受けられます。しかもDanish Film Instituteegmont (出版社)やファンド会社の中にもゲーム部門があり、投資を受けることができます。うちのスタジオも現在Danish Film Instituteから奨励金(返さなくていい)を受けて新規ゲームのプロトタイプを作っています。

 


そしてコペンハーゲンのお隣のスウェーデンの南部にはゲームスタジオが密集しています。最南端のマルメには、『ChandyCrush』のKing、Massive Entertiment(Ubisoft)が大きなビルを構えています。そこからスピンアウトして自分たちでインディゲームを作る人たちも多くいます。

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南部に密集するゲームスタジオ

ヒカキンもやってたMediocreの『Smash Hit』はアンドロイドだけでも1億DL以上あるんですが、マルメ在住のエンジニア&アーティスト2名で作られてて、しかもUnityを使わず独自エンジンで作ってるこだわりよう。一番最近のゲーム『PinOut』のネオン + スモークの繊細な表現なんかはさすがです。

そして私の愛して病まないゲームスタジオSimogoiOSのみのリリースで全てPaidゲーム。ここも2人で作っていて、アーティストが小池徹平似です。毎回リリースするごとにApp Store内のバナーフィーチャーが異常なくらい大きく、期間が長いので「Appleに愛されすぎてるゲームスタジオ」と私の中ではひっそり呼んでいます。

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Simogoのオフィスめちゃくちゃ可愛い



マルメのインディゲームの開発者は「新しいゲームプレイへの探求」への好奇心が尋常じゃない気がします。「今までになかったゲームを作ってみよう」、「こういうゲームあったら面白いよね」「以前あったゲームでもこのゲームプレイを入れたらもっと面白くなるよね」みたいな。そして結構ちゃんとプロトタイプを作ってコミュニティのみんなにテストしてフィードバックをもらい反映し、作り込んでいく。このエコシステムがマルメのインディゲームコミュニティの中にはあります。びっくりするぐらいみんな協力的でプログラムやアートのアドバイス、ストアのアイコンデザインなんかを無償で手伝ったりしてくれます。


これはぶっちゃけ超カルチャーショックでした。

 


私が日本でゲーム制作に関わっていた時はヒットしたゲームをベースに何かIPを載せたり、プロトタイプの時点で面白くなかったら、制作中止にしたりしてたので、もうちょっとちゃんとフィードバックを多く受けていたら出来てたゲームもあったかなと反省してます。

 

 

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反省・・・

 


もちろんインディゲームスタジオでゲームを作っている友人は、AAAスタジオみたいに膨大な制作コストやその回収を考えるプレッシャーがないので、時間をかけてしっかり作れるゲーム制作環境があるのはプラスかなと。あとはPaidゲームも多く、前作の売り上げでちゃんと稼げている人も結構いて、それで生活が成り立っているインディゲーム開発者もざらにいます。みんな家を買ってたり、家族を養ってたり、普通の人生を送っています。

 

 

おそらくこの点に関しては北欧の社会福祉システムが救済している部分も多いです。子供の教育費、学費、医療費もほぼ無料ですし、年金も(今の所)保証されています。ゲーム会社に一定期間勤めて、辞めて、失業保険をもらいながらゲーム作ったりしてる人もいて、そのお金が尽きたらまたゲーム会社に勤めたりと、社会保障がしっかりしていて、万が一ゲームが売れなくてお金が稼げなくなった時でも日本のように社会的生活貧困者になる可能性はかなり低いです。その代わりに、52%以上の所得税、23%以上の消費税を払って生きているので、その投資のリターンとして日常生活と将来の不安から解き放たれて今の生活・仕事を楽しめる状況があるのはインディゲーム開発者にとってはとてもとーっても良い開発環境だなぁと、できればこの環境に長くいたいなぁと思っています。

 

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あ、しかも英語で仕事できるのでめちゃ楽です!

 

まだ私たちのゲームスタジオは自給自足できてないので、ゲームパブリッシャーやゲームスタジオで働きつつ、ゲームを創ってます。でも早く自給自足で生きていけるようにぼちぼち制作していこうと思います。

 

 

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1年に1本はゲームリリースしたい

 


そんなわけで(どんなわけで)、モバイルゲームや最近のNintendoSwitch向けの北欧インディゲームが、なぜ世界で盛り上がっているか?考察するエントリーだったわけなんですが、結論としてはやっぱり、

 

愛されてるゲームは

 

 

新しいゲームプレイへの好奇心・尊敬・愛

ゲーム&プレイヤーと真摯に向き合う開発者の姿勢

 

があるってことなんだと思います

 

もう5120文字も長々と書いてきて、結局そこなのかよ!って感じですが、いやでもやっぱり北欧のインディ開発者には「愛」があるんです。多分それは私がファミコンで『スーパーマリオ』や『星のカービィ』からもらった「夢」や「憧れ」「冒険」「ワクワク」が詰まったそれとよく似ている感じがするのです。



と言うことで、そんなインディゲーム製作に向いている北欧に移住して現在こちらで生活しています。これから「愛」あるインディタイトルを北欧から創っていけたらと思います。おー!

 

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

現場からは以上です。